季節

五山の送り火はいつから始まった?文字に込める意味や由来は!?

 

お盆の終わりの日、
戻って来た霊をあの世へ送り出す行事が送り火で、
日本の全国各地で行われます。

この送り火を大規模に行うのが、
あの「だいもんじ」で有名な京都五山の送り火です。

 

では、五山の送り火はいつごろから始まったのでしょう?

また、「大」を初めとする文字に込められた意味や願いは?

 

こうして見ると知らないことばかりですよね。

五山の送り火はお盆の行事の一つですので、
送り火のことはもちろん、
お盆の行事についてもいっしょにご紹介しますね!

 

Contents

お盆の実施時期について

そもそもなぜお盆という名になっているか、
ご存知でしょうか??

お盆とよばれている理由は、
仏教行事の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が、
お盆に供え物を乗せて祖先の仏壇に供えるところから
「お盆」と言われるようになりました。

元々、旧暦の7月15日に行われていましたが、
明治になり新暦(太陽暦)が採用されると、
東京や一部の地域はこれまでより
ひと月以上早く行われるようになりました。

そしてその他の地域では、
旧暦の盆ではなく、
新暦の8月15日(月遅れ盆)に行っています。

本当に旧暦(太陰歴)でお盆を行う地域は、
沖縄や奄美地方だけですね。

旧暦の7月15日は、
太陽暦と太陰歴との誤差で毎年変わります。

今年(2021年)は8月22日ですが、
毎年ひと月からふた月くらい新暦と違ってきますよ。

本文中では以下の様に定義します。

  1. 盆(新暦、太陽歴)    

    盆の実施日は7月15日。

  2. 旧盆(旧暦、太陰歴)

    毎年ひと月からふた月くらい変わります。

  3. 月遅れ盆(新暦、太陽暦)

    盆の実施日は8月15日

 

五山の送り火はどんな行事??

送り火は仏教の行事で霊をあの世へ送りだすこと。

送り火のことを知りたいと思えば、
お盆のことから学習すると分かりやすいです。

仏教の教えではお盆の月になると地獄の門が開いて 、
霊がこの世に戻って来られるようになります。

このようにこの世とあの世を行き来する霊のことを
精霊(しょうりょう)とよびます。

対してこの世に残り続ける霊が幽霊ですね。

お盆の時期になると精霊をお迎えして、
一緒にすごし、あの世にお送りします。

実際に昔はどんな行事をしていたのでしょうか?

わからないことが多いので、
かつてお盆に行っていた行事をまとめました。

  • 1日(ついたち)

地獄の釜のふたが開いてあの世とこの世がつながって
精霊が出てこられるようになるみたいですね。

仏教ではこれを「釜蓋朔日(かまぶついたち)」
というそうです。

  • 7日(たなばた)

あの七夕のことですが、
仏教では戻ってくる精霊をお迎えして
安心して休まれる場所(精霊棚)を用意します。

そして戻るときに迷子にならないようにと
目印の旗(幡)を立てるそうです。

仏教ではこれを「棚幡」と書いて
「たなばた」と
よびます。

昔はお盆と七夕とがつながっていたのですね。

ほんとに驚きます。

 

  • 13日(むかえび)

迎え火は精霊をお迎えする
野火(やか、のび)のことです。

野火(外で枯れ草などを焚いたあかり、
かがり火もその一つ)を灯して
霊が休む場所(精霊棚)に
お供えをします。

現代のご家庭では、
実際に火を焚くことは難しいので
提灯を灯して代わりにしています。

  • 15日(おぼん)

戻って来られた精霊といっしょに過ごす日です。

仏壇にお線香をあげてお墓参りをして、
しっかり供養しましょう。

  • 16日(送り火)

送り火は精霊をあの世へ送り出す野火のことで
迎え火の逆ですね。

やはり、京都の五山の送り火が有名ですが、
家庭では提灯で代用します。

 

月遅れ盆をおこなう地域で、
8月13日のお盆の入りから8月16日の盆明けまで
休みとする企業が多いのは、
精霊と家族がゆっくりと過ごすためだったのですね。

また山の日(8月11日)が始まったのは、
欧米と比べて長期休暇をとらない
と言われている日本人を、
お盆にからませて休ませようとしたのでしょう。

ここまで、お盆に関する行事をざっとまとめましたが
いかがだったでしょうか?

仏教用語には意味がよく分からない言葉が多いので
難しく感じますよね。

 

五山の送り火の始まりはいつ?文字の持つ意味は?

五山の送り火の始まり

五山の送り火の始まりは
実はよくわかっていません。

江戸時代になったばかりに書かれた
文献「慶弔日件録(けいちょうにっけんろく)」に

次の記述があります。

「晩に及び冷泉亭に行く、山々灯を焼く、

見物に東河原に出でおわんぬ」

 

フィールド・ミュージアム京都「大文字五山の送り火」 から引用
フィールドミュージアムホームページ

 

この記述の意味は

「日が落ちて冷泉家のお屋敷に行くついでがあるので
山々に灯がともっている(焼かれている)のを
東河原でいっしょにみませんか?」ということでしょう。

このことから1600年ころには五山の送り火を
実際に行っていたことが伺えます。

これより前のことは
文献として残っていませんので定かではありませんが、
主につぎの3つの言い伝えがあります。

 

  1. 平安時代の初めに空海が始めた説。

    その昔、大文字山麓にあった浄土寺というお寺が
    火事になった時の本尊の阿弥陀仏が山の上に飛んできて
    まばゆい光を放った。

    その光を真似て始めたのではないかと伝えられています。

  2. 室町時代の中ごろに室町幕府8代将軍足利義政が始めた説。

    銀閣寺を建てたことで有名な足利義政が、
    近江の合戦で命を落とした実子「義尚」の供養を
    家臣に命じて始まったと伝えられています。

  3. 江戸時代の初めに能書家(のうしょか)近衛信伊(のぶただ)が始めた説。

    1662年に作られた書物「案内者」に
    「大文字は三藐院信尹(さんみゃくいんのぶただ)殿の筆画にて」
    と書いてあり、
    この文の意味は「大文字は信伊殿の書かれたもの」です。

    このことから近衛信伊が始めたのではないかと
    言われています。

     ※能書家とは、書における高度な技術と教養を持った専門家のこと

 

3つの言い伝えを紹介しましたが、
どの言い伝えが本当の始まりでしょうか?

五山の送り火はとても大規模な行事です。

いまだに始まりがはっきりしないなんて不思議ですね。

 

五山の送り火の文字の意味

つぎは送り火に使われている文字の意味について
紹介して行きます。

  • 「大」

「大」という文字も始まりと同じようにいろんな説があって
今でも分からないことだらけみたいですね。

  1. この世を作っている「地・水・火・風」の

    4大要素の「大」という説。

  2. 「大」を分解すると「一」と「人」に分かれて

    「ひとりの人」と見て無病息災を願った説。

  3. 「大」という文字が

    もとは陰陽道の魔除けの「五芒星」だったのではないか?

  4. 1年を通して位置が変わらない北極星を

    かたどったのではないか?

  5. 弘法大師が「大」の文字に

    護摩壇(ごまだん)を組んでいたからと言う説。

いま伝えられていることはこのくらいですが、
いずれも良く分からないのが本当みたいです。

五山の送り火の始まりも「大」の文字に託した意味も
わからないなんてとてもミステリアスで逆に、
この世のものでない感じがとても良いですね。

なんか、わくわくしませんか?

 

  • 「妙」

「妙」は日蓮宗の僧
日像が日蓮宗の経典「南無妙法蓮華経」の題目から
「妙」の字を書いたのが始まりで
それを地元の人々が火を灯し始めたとされています。

 

  • 「法」

「法」も同じ日蓮宗の僧
日良が「妙」のとなりに書いたが左側に空きがない為、
右側にして火を灯したそうです。

この時代は文字を右から左に書くところから分かったことですね。

 

  • 「船」

「船形」は精霊を送るための船と言われています。

また、
天台宗の最澄の弟子で西方寺の開祖円仁が嵐の中、
念仏を唱えたところ嵐が収まり
唐から無事帰国できたことから
始められたという説もあります。

これも奈良時代までさかのぼる言い伝えですから
よくわからないのが実情でしょう。

 

  • 「大(左)」

五山送り火の始まりとされる江戸時代の書物に載っていないことから、
後から追加されたと言われています。

最初は、「大」ではなく「天」だった時代もあったようです。

 

  • 鳥居

空海(弘法大師)が石仏千体を刻んで開眼供養して
鳥居の形が作られたという説と、

ふもとの愛宕神社の鳥居にあやかったという説があります。

送り火の最後に火を付けるので神社の災いが起こらないように
願う思いを表していると伝えられています。

仏教の行事に神社が入っているところが神仏習合で
いかにも日本らしいですね。

 

ここまで五山の送り火の由来や意味を見て来ましたが、
始まりも含めてはっきりしないことが多かったですね。

明治以前はこれまでご紹介してきた五山の他にも

「い」、「一」、「竹の先に鈴」、「蛇」、「長刀(なぎなた)」

という文字もありましたが、
昭和の初めまでになくなってしまいました。

 

これにより今の五山となって
五山の送り火
という名前が定まりました。

 

残っていれば十山の送り火になっていましたね。

 

先祖(精霊)を敬い、心を清らかに

毎年、京都では月遅れ盆明けの日(8月16日の夜)に
五山の送り火が開催されます。

夜8時から点火を始めて、
東側の「大文字」から火が入っていきます。

 

「20:00 大文字」⇒「20:05 松ヶ崎妙法」⇒

「20:10 船形万灯籠」⇒「20:15左大文字」⇒

「20:20鳥居形松明」

 

5分おきに点火していき、
東から西に向かって連続して火が移って行くさまは、
精霊たちがあたかもあの世に旅立っていくように
見えるのではないでしょうか?

お盆の終わりを告げるように1時間ほどかけて
火はゆっくりと消えて行きます。

 

■まとめ

正式な記録には残っていませんが、
数百年前から続けられた伝統行事です。

五山の送り火の文字の意味もいろんな言い伝えがあり、
正確なことは分かりませんでしたが、
お盆にご家庭で行う行事は
意味も由来も五山の送り火と同じです。

お盆は(月遅れお盆や旧暦のお盆も同じ)、
先祖の霊を迎えて供養をして
再びあの世に送り出す仏教行事です。

普段あえない家族ともゆっくり会えるいい機会です。

ぜひこの機会をうまく使って頂きたいですね。